愛すべき デイサービスの諸先輩方

今朝は少々肌寒く、1枚余分に羽織ってデイサービスのパート勤務へ出た。

 

勤務先まで歩いて2分ほどだが、ちょうど真ん中辺りに信号がある。

信号待ちの僅かな時間に、花たちの手入れをしているお隣さんに出くわすので

今朝は寒いね、とか 行ってらっしゃい、とか挨拶をかわしながらの出勤である。

 

もうここの団地に住み始めて凡そ38年になるけれど、ご近所さんは皆さん

同じ頃にこの町に住み始めた者同士なので、お互いの家族の顔やどこの息子が

結婚したとか、だれのところに孫が生まれたとか、ある程度の情報は自然に入って

来るのである。

 

ご近所同志の揉め事やいざこざが無いので、平和で住み良い向こう三軒両隣である。

 

さて、そんな場所に5,6年前デイサービスの施設が出来た。

そこの厨房でご飯を作るパート勤務を始めてから、かれこれ5年半が過ぎた。

良くぞ続いたそのわけは、ひたすらに徒歩2分の通勤時間であろう。

 

初めのころは週5で頑張っていたけれど、寄る年波には抗えず、足腰にダメージが

きてしまった。

週4になり、週3になり、今は週に2日のお仕事をさせて貰っている。

 

ここのデイサービスは女性が社長というのもあるが、心配りが素晴らしい。

まずアットホームな雰囲気であるし、笑い声がいつも溢れている。

管理責任者の男性が、わざとおちゃらけたり、明るく声掛けしたりして

つい寂しくなりがちな場を盛りあげてしまうので、みんなつられて笑っている。

 

看護師さんや他のスタッフ達も、優しくも時に厳しく家族のような対応をしている。

私は厨房で御飯を作りながら、その介護スタッフ達の様子にいつも感服してしまう。

 

ここに来るご利用者様は80歳90歳以上の一人暮らしの方も多い。

車椅子や 杖を突いてやっと歩ける方など、自分一人では買い物に行く事も

ままならない暮らしのなか、ここに通って1日を過ごされる。

 

大正と昭和 平成の時代を駆け抜けて来られた 尊敬すべき大先輩たちであるが、

ここでは決して威張らず、おごらず、いつも静かに穏やかに過ごされている。

 

この6月に100歳を迎える女性がいらっしゃる。

いつも車椅子か、疲れたらベッドで横になるかなのだが 眼が不自由な為に、

食事介助は毎日スタッフがしている。

歌をうたうのがお好きなので、一人のスタッフが「うさぎとかめ」を歌おうと

誘うが、いつも途中から何故か 「どんぐりころころ」になってしまい、全員

大爆笑となる。それを又面白がって 時々これで場を盛り上げているスタッフもいる。

 

♪ もしもし亀よかめさんよ 世界のうちでお前ほど 歩みののろい者はない

   どうしてそんなに のろいのか

   お池にはまってさあ大変 どじょうが出てきてこんにちわ

     坊っちゃん一緒に 遊びましょう ♪

 

何故そうなるのか分からないが、このフレーズを毎回 大きい声で合唱して

大笑いして終わるのである。100歳のおばあちゃまが一番元気な声でしれっと

して歌い、他の皆さんもそれに合わせている。

あまりに微笑ましくて私も厨房で一人クスクスと笑ってしまうのである。

 

このおばあちゃまは、色白で白髪の上品な感じなので、女性スタッフ達が取り囲んで

色が白くてきれいだね、若い頃はもてたでしょうねえ、などと口々に賛辞をのべると

うふふふ、と可愛らしい顔をほころばせて笑顔で応えて下さるので、目は見えないが

100歳ながら本当に愛らしい。

 

わが女社長は、このおばあちゃまの百寿のお祝いのために、ピンク色のちゃんちゃんこ

と帽子をネットで買って準備している。6がつの100歳の誕生日には、ここでお祝い

をするつもりでいるのだ。

敬老の日やクリスマスなど毎年イベントをして みんなで一緒にお祝いをする。

仕出し弁当を取って、スタッフ達が用意したゲームや歌や踊りなど心尽くしの

もてなしで楽しんで貰う。

 

ご利用者様の誕生日には、スタッフ全員からのお祝いメッセージの色紙と

王冠や テイアラを付けた笑顔の写真を大きく引き伸ばしてプレゼントする。

厨房でも いつもとチョットだけ違うランチを作る。

ちらし寿司とか茶わん蒸しなどを準備してみんなで一緒にお祝いの膳をかこむ。

食事をするときは、ご利用者様もスタッフ達も全員揃っていただく決まりである。

そして3時のお茶の時間に、美味しいケーキ屋さんで買って来たケーキと紅茶をいただ

くのだ。

 

節分の日にも、社長が恵方巻きをたくさん買って来て皆でたべる。

 

私は他の施設でも働くことがあったけれど、ここまでする経営者はいなかった。

 

今日は午前中に、管理責任者の男性スタッフが一人の利用者様の散髪をしていた。

  ちょっと伸びてきたから切りましょうか?と了解を得てからだが。

女性利用者様の髪は、いつも社長が受け持つ。

お二人ともなかなかの腕前であるが、もちろん無料の美容院だ。

 

認知の進んだ方もいてなかなか色々な事もあるが、介護スタッフ達はさすがプロ

と納得できる対応をしているのである。

 

私はここのアットホームな雰囲気がとても好きで、今まで勤務させてもらっている。

 

 

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