ふるさとの話  その8

夏の夜空の 天の川

幼い頃から 私はおばあちゃん子で、祖母と一緒に行動する事が多かった。

山々やあちこちの畑にも 祖母は私を良く連れていってくれた。

花々や畑の作物に関する色んな知識も、祖母は面倒がらず教えてくれた。

 

そんな優しい祖母に

後にも先にも一度だけ、怒られた事があったけれど、その原因をどうしても

思い出せない。あの時祖母は憤怒のあまり、私を追いかけて来た。

悪態をつきながら、村の道を逃げまくった自分の姿を、今だに忘れないが、

相当なおてんば娘だったと思う。あれは幾つの時だったのだろう。

 

夏の夜、夕食後のゆったりとした時間になると、祖母は良く私を連れて

夕涼みを楽しんでいた。扇風機など無い時代の話である。

い草のゴザと うちわを持って、家から野菜畑一つ隔てた場所にある

護岸に向かう。家の東側の板戸の窓から見ると、護岸と海は目の前だ。

 

護岸は道路よりも二メートルほど高くなっているので、そこに居ると海風が

気持ちいい。護岸の上にゴザを敷いて、祖母は足を延ばしてすわり、私は

いつも仰向けに寝っ転がって涼を取った。

 

足下の薄暗い夜の海では、砂利と砂の混ざった浜辺を洗う、さざ波の音が

ザザザと不規則に繰り返している。

天を仰げば満天の星空で、 暗くそびえる山の稜線のあたりまで

大小の星たちが降るように光っていた。

 

そんな様子の広いひろい星空の、やや北の方角に 少しモワッとした

ぼやけたような細長い部分があって、それが天の川だと教えてくれたのは

祖母だった。

 

織姫と彦星の あまの川伝説を、祖母から聞いたかどうかは定かではないが、

夏の夜に、祖母と二人だけで見ていたあの星空と天の川は

今でもあのまま あの場所にあるだろうか。

 

 

 

6月頃から 青く熟れ始めるブルーベリーの花
すずらんのようで 可愛い